ONSEN
福島県
芦ノ牧温泉
Ashinomaki Onsen
温泉
川の音が、ずっと底のほうから聞こえてくるんです。阿賀川を見下ろす高台に旅館がぽつぽつと並んでいて、芦ノ牧温泉という場所は、谷の深さがそのまま静けさの深さになっているような土地なんですよ。開湯から千二百年というけれど、ながいあいだ地元のひとだけが浸かる湯だったというのが、この温泉の性格をよくあらわしているなあと思うんです。
道がひらかれたのは明治に入ってからのことで、それまでの時間のほうがずっと長い。湯治の気配と、賑わいを夢みた時代の建物とが、ふしぎに重なって残っています。大川荘のロビーがある作品の舞台に似ていると話題になったのも、この土地がもともと持っている異界めいた空気のせいかもしれません。
長く泊まると、朝の足湯と散策路がふだんの習慣になっていくんです。会津若松まで出られる距離感は、暮らしの拠点としてもちょうどいい。はじめて日本の温泉に浸かるひとには、川と湯と静けさだけで一日が終わる、そのすこし退屈な贅沢をすすめたいんですよ。
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