ONSEN
長野県
中房温泉
Nakabusa Onsen
温泉
湯が、ほとんど沸騰しているんですよ。地面のすぐ下から、ものすごい熱がせり上がってくる場所に、ぽつんと一軒だけ宿がある。中房温泉というのは、そういうところなんです。中房川に沿ってずうっと湯が湧いていて、地表には珪華という、湯が長い時間かけてつくった白い堆積物がひろがっている。
それが天然記念物になっているというのが、ちょっとふしぎな感じがしますよね。江戸のころに開かれて、百瀬家がずっと守ってきた宿には、明治の湯治場建築がそのまま残っていて、本館菊なんかは文化財として登録されているんです。泊まると、ふだんの時間の流れかたとはべつの速度に巻き込まれるんだなあ。
浸かって、歩いて、また浸かる、という繰り返しが一日のかたちになる。長く滞在するなら、この「繰り返し」がからだに馴染んでくるまで待つのがいいんです。暮らすように泊まれる場所ではあるけれど、冬は雪に閉ざされるから、季節ごと受け入れる覚悟がいる。
海の向こうから来た人にとっては、山の奥の奥にこれほど熱い湯がひっそり在ること自体が、日本の温泉のいちばん素朴な姿かもしれません。
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