ONSEN
長野県
中の湯温泉
Nakayu Onsen
温泉
硫黄のにおいが、崖のあちこちから立ちのぼっているんです。梓川沿いの山深いところに、ぽつんと一軒だけ宿がある。中の湯温泉旅館という、それだけの場所なんですよ。湯は硫黄泉と鉄泉のふたつがあって、洞窟のなかで浸かる「卜伝の湯」には、むかし剣の達人・塚原卜伝が修行に来たという話が残っています。
ふしぎなのは、こんなに山の奥なのに、ここがずっと「通り道」だったということなんだなあ。安房峠を越えるひとも、上高地へ向かうひとも、ここを歩いて抜けていった。長く泊まるなら、一軒宿の静けさがそのまま暮らしの輪郭になるような時間が待っています。
穂高の山並みを遠くに眺めながら、ふだんの速度をすこし手放す感じ。多拠点で動くひとには、冬に道が閉ざされるという不便さも含めて、季節に従う暮らしの手触りがあるんです。海の外から来たひとにとっては、国立公園のまんなかで湯気に包まれるという体験そのものが、ちょっとほかにない時間になるんだと思います。
ONSEN
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