ONSEN
岐阜県
濁河温泉
Nigorikawa Onsen
温泉
空を見上げると、ほんとうに暗いんです。街灯のひかりに慣れた目がしばらく戸惑って、それから星がじわじわ浮き上がってくる。濁河温泉は、車で行ける温泉としては日本でいちばん高いところにあって、亜高山帯の原生林にぐるりと囲まれたまま、ずっとここにあるんですよ。
江戸時代の中ごろに見つかった湯は、鉄分をふくんだ茶色のにごり湯で、浸かるとからだの芯がじんわりほどけるような手ざわりがあるんです。コメツガやオオシラビソの森を歩けば、仙人滝のほうから水音がとどいて、ふだんの時間の速さがすこしおかしく思えてくる。
泊まるたびに、夜のしずけさの深さにおどろくんだなあ。長く暮らすように滞在するには、この「なにもなさ」がむしろ贅沢で、多拠点の一つとして濃い休息を置く場所になりえます。飛騨小坂の駅からかなりの距離があるけれど、そのぶん訪日の旅人にとっては、日本の山の奥にしかない空気をまるごと体験できる場所なんです。
小坂温泉郷のひとつとして、ここはただ静かに湯を湛えつづけている。
ONSEN
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