温泉
この場所の物語
潮が満ちてくるのを、じっと待つんです。坂本温泉はそういう場所なんですよ。鹿児島県の硫黄島の海岸に、コンクリートでつくられた小さな露天風呂があって、源泉がそこに湧き出ている。でも、熱すぎてそのままでは浸かれない。海水が石積みの護岸を越えて流れ込んでくることで、ちょうどいい温度になるんだなあ。
浸かるタイミングは、潮が決める。人間のほうが、自然の時間に合わせるんです。歩いてたどり着くまでに港から少し時間がかかるのも、なんだかふしぎとその待ち時間に意味があるような気がしてくる。長く滞在するほど、潮の読みかたが身についていくのかもしれない。
生活の拠点にするには相当に不便だけれど、その不便さそのものが、この場所の素の表情なんですよね。訪日客にとっては、こんな入浴体験はきっと世界のどこにもない、と感じるはずです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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