ONSEN
長野県
渋温泉
Shibu Onsen
温泉
石畳をぬれた下駄で歩くと、かつん、かつん、と音がして、それだけでちょっとうれしくなるんです。渋温泉というところは、横湯川に沿って木造の旅館がぎゅっと肩を寄せ合うように並んでいて、ふだんの時間とはすこし違う速度で流れているような気がするんですよ。
九つの外湯を順に浸かっていく「苦労を流す」湯巡りは、共通の鍵をもらって、ひとつずつ扉をあけていく。泉質がそれぞれ違うから、からだの反応もそのたびに変わるのがふしぎなんだなあ。信玄かま風呂という蒸し風呂もあって、湯に浸かるのとはまた別の熱が、じんわり届いてくるんです。
長く泊まるには宿も街もぎゅっと密で、暮らすというよりは「滞在する」感覚に近い。生活拠点として考えると、この密度はすこし窮屈かもしれないけれど、数日ここにこもる贅沢はたしかにある。訪日の人にとっては、木造の温泉街をそのまま歩けること自体が、ほかではなかなか出会えない体験なんですよ。
湯田中駅からバスで少しの距離に、千三百年分の湯けむりが静かにたまっているんです。
ONSEN
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