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この場所の物語
鳥羽湾に浮かぶ小さな島影のひとつが、坂手島というところなんですよ。島ぜんたいが浅間山という小山になっていて、平らな土地は南側にちょっとだけ。鳥羽マリンターミナルから市営定期船に乗れば、十分もしないうちに坂手港の桟橋に着いてしまう。本土がすぐそこに見えているのに、降り立つと空気がすっと変わるんです。
若宮神社の天王祭で棒ねりという行事があって、合祀された浅間や白山の名前を聞くと、この島がずっと祈りの土地だったんだなあ、と思う。万葉集にも顔を出し、伊勢神宮の御厨でもあったという来歴が、林昌寺という島でひとつきりのお寺や、海沿いの崖のかたちに、しずかに重なっている。
ふだんの島の暮らしには、常勤の医師がひとりいる坂手診療所があり、定期船は一日に二十便以上も本土と島を結んでいる。買い物も用事も鳥羽の街でできてしまう近さなのに、戻ってくれば人の少ない小さな漁村が待っている。そういうぐあいの島で、しばらく机を置いて過ごすのも、何度か通って島の祭の日に合わせるのも、ちょっとふしぎな経験になりそうなんですよね。
菅島に泊まる
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