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この場所の物語
トロッコ列車が、閉山したあとの坑道をいまもゆっくり走っているんですよね。池島炭鉱の跡が、観光のために整えられたというより、暮らしていた時間がそのまま置き去りにされたまま残っている、という感じなんです。炭鉱住宅群の窓が並ぶ風景を歩いていると、ここで七千人を超える人がふだんの暮らしをしていたんだなあ、と、すこしふしぎな気持ちになります。
西彼杵半島から船で渡る、長崎市に属するけれど海の向こうにある島、というぐあいの距離感も、独特なんですよ。島内唯一の医療機関は長崎市立池島診療所で、人の少ない島の暮らしを静かに支えている。九州で最後まで石炭を掘っていた島、と聞くと、なにか言葉にしづらい余韻が残ります。
松島から泳ぎ渡ったというイノシシが、いまは島で増えているらしい、というのもおもしろい話で、人が引いたあとに、別の生きものがそろりと入ってくる。郷愁、というひとことで片づけたくない、まだ進行中の島の時間が、ここにはあるんです。
池島に泊まる