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新居浜太鼓祭り
秋になると、男たちが太鼓台の下に集まる。 愛媛・新居浜。重さ約三トン、高さ五メートル半、長さ十二メートルの太鼓台。金糸の刺繍に覆われた巨大な山車を、最大百五十人のかき夫が、肩で担…
秋になると、男たちが太鼓台の下に集まる。
愛媛・新居浜。重さ約三トン、高さ五メートル半、長さ十二メートルの太鼓台。金糸の刺繍に覆われた巨大な山車を、最大百五十人のかき夫が、肩で担ぐ。祭りのあいだ、車輪を外す。人の力だけで、持ちあげる。
最大の見せ場は「かきくらべ」。何台もの太鼓台が一カ所に集まり、いっせいに差しあげる。腹に響く太鼓。揃いの法被。ソーリャ、ソーリャ、の掛け声。地面に下ろさず、どれだけ高く、どれだけ長く保てるかを競う。
もとは、秋の実りを氏神に感謝する祭りだった。その感謝が、力比べになり、技比べになった。阿波踊り、よさこいと並ぶ四国三大祭りのひとつ。けれど、夏ではなく十月に開かれるせいか、知る人は意外と少ない。
夏の喧噪が引いたあとの、もうひとつの祭り。新居浜の秋は、男の肩の上で、いちばん熱くなる。
別子銅山が元禄の世に掘り開かれてから、この土地の地面はずっと、なにかを生み出し続けてきたんですよね。住友財閥の礎となった坑道の記憶は、マイントピア別子の坑内体験としていまも歩いて感じることができて、産業の歴史が博物館の展示ではなく、体の感覚として残っているのがいいんです。
新居浜の平野は北に燧灘の海を持ち、南には急峻な四国山地がせり上がっていて、その落差のなかに先端化学や鉄工の工場と、樹齢千年の楠を抱く一宮神社とが、ふつうに並んで存在しているんです。別子飴やハタダ栗タルトを買いながら、愛媛県総合科学博物館のプラネタリウムで夜空を眺めて、夕方には別子ラインの渓谷を散歩する、そういうふだんの一日がこの土地では組み立てられるんです。
10月になると内宮神社の石段かきあげを核に新居浜太鼓祭りが動き出して、工都の静けさとはまるで別の顔が現れます。遠くから来た人にとっては、産業遺産と祭りと山と海がひとつの市域に重なっていること自体が、ちょっとふしぎでいいなあと思える発見になるんじゃないかな。
愛媛県新居浜市に泊まる
この地に重なるもの
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