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この場所の物語
沙流川のほとりに、木を彫る音がある。二風谷アットゥシの布地が窓辺に吊られ、アイヌ民具の線が、ふだんの暮らしの中にそっと混じっているんですよね。平取町という場所は、そういう「つくり続けること」が今も途切れていない、すこし珍しいところなんです。
平取町立二風谷アイヌ文化博物館には、民具が約四千点ある。数字より先に感じるのは、ひとつひとつの道具に手の跡があるということで、見ていると、誰かが何かを必要として作ったんだなあ、という気持ちになってきます。チセの復元家屋を歩いたあと、びらとり温泉「ゆから」の湯に入ると、山間の静けさが、ちゃんと体に届いてくる。
日高山脈の西側に広がる谷間は、稲作も畜産も競走馬の生産もある、農と山が混じった地形で、びらとり和牛やトマト「ニシパの恋人」が育つ土台になっています。ハッタオマナイ岳の方角を見ながら自炊の買い物を考えると、食べるものの出どころが、わりと近くにある。チプサンケの季節に川へ出ると、この土地が先住民族の主張と記憶の上に立っていることが、静かに伝わってくるんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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