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山鹿灯籠まつり
頭の上に、和紙の灯りがともる。 熊本・山鹿。木も釘も金具も使わず、和紙と少しの糊だけで組まれた金灯籠。柱も障子の桟も中は空洞で、驚くほど軽い。一人前の灯籠師になるのに、十年かかる…
頭の上に、和紙の灯りがともる。
熊本・山鹿。木も釘も金具も使わず、和紙と少しの糊だけで組まれた金灯籠。柱も障子の桟も中は空洞で、驚くほど軽い。一人前の灯籠師になるのに、十年かかるという。その灯籠を頭に掲げ、揃いの浴衣の女性が、千人で舞う。
「よへほ節」の、ゆったりした調べ。浴衣の列が、ひとつの呼吸でうねる。派手ではない。むしろ静かな祭りだ。だからこそ、闇のなかで揺れる金色の灯が、いつまでも心に残る。
起源は、深い霧に行く手を阻まれた景行天皇を、里人が松明を掲げて迎えたことだという。以来、灯火を献じる祭りになった。火が、祈りであり、もてなしだった頃の記憶。
初日の夜は菊池川の花火。二日目の夜は千人灯籠踊り。古い豊前街道の町並みが、千の灯にしずむ二日間。山鹿の夏は、声高ではなく、静かに光る。
和紙を幾重にも貼り重ねて灯りを宿す山鹿灯籠の細工は、ひとつ手に取ると、職人の指先がどこを通ったか、なんとなくわかるんですよね。山鹿灯籠民芸館で制作実演を眺めていると、ふだんの暮らしの中に工芸が溶けているこの土地の気質が、すこしずつ見えてくる気がします。
さくら湯の木造の軒下に荷物を置いて、菊池川流域の盆地に沈む夕方をぼんやり過ごす、そういうひとときが、山鹿ではごくふつうに手に入るんです。平山温泉も、山鹿やまが温泉も、江戸のころから湯治場として人を受け入れてきた土地の蓄積が、建物の木の色やお湯の温度にちゃんと残っています。
八千代座は1910年に建てられた芝居小屋で、重要文化財でありながら今も演技会の舞台として使われているんです。熊本県立装飾古墳館では岩原古墳群を間近に見ながら勾玉作りの体験もできるし、国見山を北に仰ぐこの盆地には、古代から積み上がってきた層の厚さがある。和栗や来民の渋うちわを手に取りながら、そういう土地の奥行きをゆっくり確かめていくのが、ここでの時間のいちばん正直な使い方だと思います。
熊本県山鹿市に泊まる