1件の予定
川越まつり
蔵造りの町を、山車が行く。 川越。江戸の面影を残す、小江戸。黒い蔵造りの商家が、いまも軒を連ねる。その通りを、背の高い山車が、ぎりぎりで抜けていく。 山車の上に、からくり人形。家康…
蔵造りの町を、山車が行く。
川越。江戸の面影を残す、小江戸。黒い蔵造りの商家が、いまも軒を連ねる。その通りを、背の高い山車が、ぎりぎりで抜けていく。
山車の上に、からくり人形。家康、鯉、天女。各町が、自慢の山車を持ち寄る。総数、二十九台。
夜、曳っかわせ。山車と山車が、出会う。たがいに正面を向け、囃子を競い合う。提灯を掲げ、笛と太鼓が、激しくなる。譲らない。
江戸の祭りが、ここに残った。
本家の江戸では、もう見られない天下祭りの形。それを、川越が受け継いだ。三百七十年。蔵の町に、囃子が響く。
蔵造りの建物が通りに並ぶとき、壁の厚さがそのまま時間の厚さに見えてくるんですよね。川越大火のあとに商人たちが選んだ、あの土壁の重さが、今もふだんの歩道にちゃんと残っている。
喜多院の境内を抜けて川越城本丸御殿のそばまで歩くと、駅からそれほど離れていないのに、急に空気の密度がかわる気がして、いいなあ、と思うんです。旧山崎家別邸の洋館と和館がひとつの敷地に収まっているのも、この街が江戸だけじゃなく大正や昭和もぜんぶ抱えてきた証しで、その重なりを一日かけてゆっくり確かめるのが、この街のいちばん楽しい過ごし方なんだと思います。
大正浪漫夢通りの看板建築を眺めながら、亀屋栄泉の芋菓子をひとつ買って、川越煎餅の袋をぶらさげて歩く、そういうふつうの午後が、ここではちゃんと成立するんですよ。東武東上線と西武新宿線と川越線、三路線が通っているので、どこかを拠点にしている人がふと一日使いたくなったときにも、たどり着きやすい。川越芋のことを調べはじめると、この街の産業の根っこがサツマイモと狭山茶と和菓子でできていることがわかって、それがまたおもしろいんですよね。
埼玉県川越市に泊まる