温泉
この場所の物語
駅を降りたとたん、空気がすこし湿っているのを感じるんです。越後湯沢という場所は、新幹線でふっと来られてしまうのに、足を踏み入れるとちゃんと「山のなか」なんだなあ。平安の終わりごろに湯が見つかり、三国街道を歩く人たちがここで身体をほどいてきた、その時間の厚みが町のあちこちに残っています。
「山の湯」と呼ばれる共同浴場は、地元で「やまんぼちゃ」と親しまれていて、湯の沢から湧く源泉にただ浸かる、それだけのことがふしぎとうれしい。川端康成がこの土地で物語を書いたことは有名ですが、町を歩くと、小説よりもっと静かでふだん着の顔がそこにあるんですよ。
長く泊まるには便利さと素朴さのあいだで揺れるところがあって、暮らすように過ごすにはすこし工夫がいるかもしれません。けれど訪日の旅人にとっては、雪深い日本の宿場町の空気をそのまま吸えるという、ほかでは得がたい体験がここにあるんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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