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高遠城址公園の桜
桜が、赤い。 高遠の桜は、ソメイヨシノではない。タカトオコヒガンザクラ。この土地だけの固有種で、花が小ぶりで、色が濃い。千五百本が一斉に咲くと、山の中腹がうっすら紅を差したように見…
桜が、赤い。
高遠の桜は、ソメイヨシノではない。タカトオコヒガンザクラ。この土地だけの固有種で、花が小ぶりで、色が濃い。千五百本が一斉に咲くと、山の中腹がうっすら紅を差したように見える。
城はもうない。石垣と、堀の跡と、橋だけが残る。藩がなくなったあと、旧藩士たちが桜を植えた。馬場の跡地に、馬を慰めるように。だれに見せるためでもなく、ただ手向けとして植えた木が、いまの景色になった。
天下第一の桜、と地元は言う。誇張ではなく、たぶん事実に近い。雪の残る中央アルプスを背に、紅い雲が浮かぶ。高さ千メートルの城跡から、桜越しに伊那谷が見下ろせる。
標高が高いぶん、満開は里より遅れる。里で散ったあと、ここはこれから。春を、もう一度やり直せる場所。
東に仙丈ヶ岳、西に駒ヶ岳、その両方の稜線が空を縁取る盆地で、ローメンや馬刺しをふだんの食卓に持つ人たちが暮らしているんですよね。天竜川が町の真ん中を縦断して、三州街道の宿場だった伊那部宿の本陣建物が、いまも通りに立っている。重ねられた時間の層が、道の角にさりげなく顔を出す、そういうぐあいの町なんです。
伊那市立図書館は全国公募で館長を選んだ先進的な施設で、1930年竣工の伊那市創造館と並んで、本を読んだり調べたりするための場がちゃんとそろっている。飯田線の伊那市駅を起点に、中央自動車道の伊那ICへも出られるので、山の奥にいながら外とつながる道が複数あるのも、すこし心強いんです。
1913年竣工の木造映画館・伊那旭座が現役で残っているという事実は、訪れた人の目にはっきりと、この土地が何を大切に持ち続けてきたかを教えてくれる。高遠城跡のそばで、高遠そばを手繰りながら、両側の山脈を眺める午後は、どんな暮らし方でここにいる人にとっても、おなじように静かでいい時間になると思うんです。
長野県伊那市に泊まる
この地に重なるもの
- 高遠城跡
- 遠照寺釈迦堂
- 熱田神社本殿
- 南アルプス
- 仙丈ヶ岳
- 駒ヶ岳
- 駒津峰
- 北荒川岳
- 安倍荒倉岳
- 双児山
- 黒檜山
- 入笠山
- 戸倉山
- 守屋山
- 伊那市
- 伊那北
- 沢渡
- 下島
- 赤木