1件の予定
香嵐渓の紅葉
一人の僧が、楓を植えた。 江戸のはじめ、香積寺の住職が、参道に苗を植えたのが始まり。それが代を継いで広がり、いまは四千本。十一種類の楓が、谷を埋める。 巴川に沿って、赤が連なる。待…
一人の僧が、楓を植えた。
江戸のはじめ、香積寺の住職が、参道に苗を植えたのが始まり。それが代を継いで広がり、いまは四千本。十一種類の楓が、谷を埋める。
巴川に沿って、赤が連なる。待月橋から見下ろすと、川面まで紅い。種類が多いぶん、色づきに幅がある。緋色、朱、橙、まだ青いもの。一様でない赤が、層になる。同じ赤は、二本とない。
夜はライトアップされる。水面に映る紅葉が、昼とちがう色を見せる。川と空の境が、わからなくなる。闇のなかで、赤だけが浮かぶ。
一本の木から始まった景色。三百年かけて、谷ぜんぶが赤くなった。植えた僧は、この眺めを見ていない。それでも、植えた。気の長い話が、ここにはある。
面積のほとんどを山林が占めていて、豊川や天竜川の水系がそこに細かく入り込んでいる、そういう土地なんですよね。道の駅したらに立ち寄ると、奥三河郷土館が隣にあって、旧石器時代からここに人が暮らしてきた痕跡が、さらっと展示されている。黒曜石の産地だったこと、津具金山のこと、田峯城の木造復元のこと、ふだん意識しないような時間の厚みが、すこし顔を出してくれるんです。
花祭や三河の田楽といった祭事が今も続いていて、田峰観音への奉納という形で生きている。田峯茶やからすみといった特産品も、この山の深さとつながっているんだなあと、棚に並んでいるのを見るとわかる気がする。添沢温泉は穴場と呼ばれていて、人の少ない湯というのはそれだけで、一日の終わりにちょうどいい。
つぐグリーンプラザには温水プールもトレーニングルームもあって、ここを拠点に暮らすことを想像しても、そんなに無理がない。設楽町民図書館や津具民俗資料館が日常の射程に入っているというのも、長い滞在をゆたかにしてくれそうで、いいなあと思う。山に囲まれながら、生活の道具がちゃんとそろっている、そういうぐあいの町です。
愛知県設楽町に泊まる
この地に重なるもの
- 愛知高原
- 天竜奥三河
- 添沢温泉
- 鷹ノ巣山