温泉
この場所の物語
潮の匂いがすこし混じった風が、湯上がりの肌をなでていくんです。たてやま温泉というのは、ひとつの宿の名前ではなくて、館山湾のまわりに点々とある湯の総称なんですよ。掘削の許可が降りてからずいぶん時間をかけて、ようやく開湯宣言にたどり着いた、ゆっくり育った温泉郷なんだなあ。
古原屋の湯温泉のように長く泊まることを前提にした宿があるのは、ここが単なる観光地ではなく「暮らしの延長」として湯に浸かれる場所だということなんです。房総の先っぽの、冬もおだやかな空気のなかを歩いていると、ふだんの時間の速さがふしぎに思えてくる。
里見八犬伝の物語が重なる城下の風景は、訪日の旅人にとっても、日本の「地方の海辺」の手触りをそのまま感じられる場所だと思います。東京からバス一本でつながっているのに、着いた瞬間の空の広さにちょっと驚く、そういう距離感がうれしいんですよ。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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