温泉
この場所の物語
駅のホームに降りたとたん、すこし湿った空気がほおに触れるんです。五百川の渓谷沿いにならぶ二十数軒の宿が、ふだん着のまま静かに湯を守っている。そういう場所なんだなあ、と思います。アルカリ性の単純泉はやわらかくて、浸かると肌がつるりとするから「美人湯」と呼ばれてきたんですね。
萩姫という人の伝説がこの湯のはじまりに結びついていて、八百年という時間がそのまま町の奥行きになっている。四季彩一力のような老舗に泊まると、渓谷の水音がずっと遠くから聞こえてきて、夜のしずけさがちょっとふしぎなくらい深いんです。
長く滞在するほど、この静けさがからだに沁みてくる。郡山の街まですぐ出られるのに、ここにいるとその距離を忘れてしまう。生活の拠点として行き来するには、駅が目の前にあるというのがうれしいところです。海の向こうから来た人には、観光名所をめぐるより「ただ湯に浸かって歩いて眠る」という日本のふるい時間の使い方を、そのまま体験できる場所として差し出したい。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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