温泉
この場所の物語
駅を降りると、ほんのり硫黄のにおいが鼻をかすめるんです。いわき湯本温泉というのは、そのまちの空気ごと湯に浸かっているような場所なんだなあ。傷ついた鶴がこの湯で身を癒したという古い言い伝えがあって、それがずっと語り継がれているのも、湯そのものが持つやさしさと関係しているんでしょうね。
炭鉱の時代に湯が止まってしまい、それでも戦後ふたたび湧き出してきたというふしぎな来歴を持っていて、まちの人たちはその「帰ってきた湯」とともに暮らしを立て直してきたんです。さはこの湯でふだん着のまま浸かる地元の人を見ていると、ここでの時間の流れかたがすこし分かる気がします。
長く泊まるなら、温泉通りを歩いて、磐城郡温泉神社まで足をのばすくらいの速度がちょうどいい。生活の拠点として考えると、駅前に湯があるというのは、ちょっとずるいくらいの立地なんですよ。海の向こうから来た人には、千三百年ものあいだ同じ場所から湧きつづけるという、その時間のぶあつさをそのまま手渡したいなあと思うんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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