温泉
この場所の物語
窓の向こうに、島がぽつんと浮かんでいるんです。紀淡海峡に面したこの湯処では、海と空のあいだに友ヶ島がいつもそこにあって、浸かりながらでも、歩きながらでも、その島を目で追ってしまう。湯は炭酸水素塩泉で、肌にすうっとなじむやわらかさがあるんだなあ。
漁師町の気配が温泉街の空気にまじっていて、ふだんの暮らしの声が聞こえてくるようで、長く泊まっていたくなるんです。多拠点で動く人には、海と湯と小さな町のリズムが、ちょっと心の錨になるかもしれない。淡嶋神社の針供養や雛流しは、この土地にしかない時間の刻み方で、訪日客がそっと手を止めて見入る光景がうれしい。
古代に「潟見の浦」と歌われた海を、いま自分の目で見ているというふしぎさが、この場所の手触りのすべてな気がするんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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