温泉
この場所の物語
河原の砂をすこし掘ると、もう湯が滲んでくるんですよ。湯原温泉というのは、そういう土地なんです。旭川の川底からぶくぶくと砂を噴きあげながら湧いてくる「砂湯」に浸かると、足もとから地面そのものの熱がじかに届いて、ふしぎと体の力が抜けていくんだなあ。
十世紀に性空上人が見つけたという話が伝わるこの湯は、アルカリのやわらかい肌ざわりで、ずっとむかしから人の疲れをほどいてきたんですね。ダムの下流の渓谷に温泉街がつづいていて、歩くとガラス工房やオオサンショウウオに会えるはんざきセンターがあったりして、ふだんの暮らしの時間がゆっくり流れています。
長く泊まるほどに、この「なにもしない時間」がからだに馴染んでくるんです。多拠点で暮らす人にとっては、湯治の文化がそのまま残っている場所に根を下ろせるありがたさがある。海の向こうからやってきた旅人には、川と湯と空だけでできた露天風呂という体験が、たぶんほかのどこにも似ていないものとして残るんじゃないかなあ。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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