12件の予定
五山送り火
山に、火で、文字を描く。 京都・五山送り火。八月十六日の夜。盆に帰ってきた先祖の霊を、あの世へ送り出す。 午後八時。東山に「大」の字が、炎で浮かび上がる。続いて、「妙」「法」、舟形…
山に、火で、文字を描く。
京都・五山送り火。八月十六日の夜。盆に帰ってきた先祖の霊を、あの世へ送り出す。
午後八時。東山に「大」の字が、炎で浮かび上がる。続いて、「妙」「法」、舟形、左大文字、鳥居形。五つの山に、順番に、火が灯る。
暗い山肌に、巨大な文字が、ぼうっと燃える。三十分ほどで、消えていく。
燃やすのは、護摩木。人々が、亡くなった人の名や願いを書いた木だ。それを、山で焚く。
炎は、送り火。来てくれてありがとう。また、来年。
起源ははっきりしない。だが、少なくとも数百年、京都の人々は、この火を見て、夏の終わりを知ってきた。
火が消えると、京都に、秋の気配が立つ。
京都を代表する夏の行事。
賀茂競馬
平安時代の装束で、馬が走る。 京都・上賀茂神社。五月五日。賀茂競馬。 千年近く前、宮中で行われていた競馬の神事が、ここに移された。乗り手は「乗尻」。色鮮やかな平安装束をまとい、二頭…
平安時代の装束で、馬が走る。
京都・上賀茂神社。五月五日。賀茂競馬。
千年近く前、宮中で行われていた競馬の神事が、ここに移された。乗り手は「乗尻」。色鮮やかな平安装束をまとい、二頭一組で、馬場を駆け抜ける。
勝負は、あっという間だ。一瞬で、走り去る。
だが、その一瞬のために、長い儀式がある。馬の毛並みを整え、装束を正し、神に祈る。走るのは、ほんの数十秒。
起源は1093年。堀河天皇の時代。以来、戦乱で中断することはあっても、この神事は受け継がれてきた。
新緑の馬場を、装束の色が走り抜ける。
千年前の風景が、いまも、ここにある。
京都の初夏を彩る神事。
祇園祭
疫病を鎮めるために、始まった。 京都・祇園祭。日本三大祭のひとつ。七月の一ヶ月をまるごと使う、長い長い神事である。 起源は869年。都に疫病が流行した。人々は、六十六本の鉾を立て、…
疫病を鎮めるために、始まった。
京都・祇園祭。日本三大祭のひとつ。七月の一ヶ月をまるごと使う、長い長い神事である。
起源は869年。都に疫病が流行した。人々は、六十六本の鉾を立て、悪疫の退散を祈った。それが、千百五十年以上、続いている。
クライマックスは七月十七日。山鉾巡行。「動く美術館」と呼ばれる豪華な山鉾が、都大路を進む。
見どころは「辻回し」。巨大な車輪の鉾を、交差点で九十度、方向転換させる。竹を敷き、水をまき、男たちが綱を引く。きしむ音が、響く。
前夜の宵山。提灯が灯り、屏風が飾られ、町が祭りの夜になる。
疫病への祈りが、千年を超えて、美になった。
ユネスコ無形文化遺産。
永観堂の紅葉
古くから、もみじの永観堂。 京都の数ある寺のなかで、紅葉といえばまずここ、と言われてきた。千年以上前から、その名がある。境内の楓は、約三千本。 見返り阿弥陀、という像がある。顔だけ…
古くから、もみじの永観堂。
京都の数ある寺のなかで、紅葉といえばまずここ、と言われてきた。千年以上前から、その名がある。境内の楓は、約三千本。
見返り阿弥陀、という像がある。顔だけ、うしろを振り向いている。遅れてくる者を、待つように。ふつうの仏像とは、向きがちがう。永観という僧が見た、振り返る阿弥陀の姿、と伝わる。
石段を上ると、多宝塔から市街が見える。眼下に、赤の海。京の町が、紅葉ごしに広がる。放生池に、紅葉が映り込み、水と空の境が消える。
夜間拝観の人出は多い。覚悟はいる。並ぶことも、ある。それでも、振り返る阿弥陀の前では、みな少し静かになる。紅葉が、祈りの色に見えてくる。
京焼・清水焼体験
千年の都の、土にふれる。 清水寺へつづく坂道。その界隈で、京焼・清水焼はうまれた。雅で、繊細で、絵のように美しいやきもの。 ろくろをまわす。土が、手のなかで形をかえていく。絵付…
千年の都の、土にふれる。
清水寺へつづく坂道。その界隈で、京焼・清水焼はうまれた。雅で、繊細で、絵のように美しいやきもの。
ろくろをまわす。土が、手のなかで形をかえていく。絵付けをする。筆が、白い肌に色をのせる。
京の職人が、何百年もくりかえしてきた手つき。それを、いま、自分の手でなぞる。
旅の記念ではない。千年の都の、ほんの一かけらに、ふれてみる。
壬生狂言
声の、ない狂言。 壬生狂言。京都・壬生寺に、七百年伝わる。演者は、一言もしゃべらない。鉦と太鼓と笛、その囃子だけで、物語が進む。 仏の教えを、身ぶりで説く。文字の読めない庶民に、善…
声の、ない狂言。
壬生狂言。京都・壬生寺に、七百年伝わる。演者は、一言もしゃべらない。鉦と太鼓と笛、その囃子だけで、物語が進む。
仏の教えを、身ぶりで説く。文字の読めない庶民に、善悪を伝えるための芝居だった。だから、言葉がいらない。
面をつけ、ゆっくり動く。大げさな身ぶり。炮烙を割る場面では、素焼きの皿が、舞台から落ちて、派手に割れる。
無言なのに、笑える。
泣ける場面も、ある。声がなくても、伝わる。七百年、京都の庶民が、これを見て、うなずいてきた。言葉の手前にある、何か。
時代祭
京都、10月22日。 千年の都が、自分の歴史を歩いて見せる日。 明治維新から平安遷都まで。 時代をさかのぼる順に、約2,000人の行列が京都御所を出て、平安神宮へ。 維新勤王隊の…
京都、10月22日。
千年の都が、自分の歴史を歩いて見せる日。
明治維新から平安遷都まで。
時代をさかのぼる順に、約2,000人の行列が京都御所を出て、平安神宮へ。
維新勤王隊の笛と太鼓、織田信長の騎馬、静御前、清少納言。
衣裳も祭具も、時代考証を重ねた本物づくり。
「動く風俗博物館」と呼ばれる理由。
はじまりは明治28年。
平安遷都1100年を記念して創建された、平安神宮の祭。
都が東京へ移り、沈んでいた京都が、
自らの千年を誇りに変えるために始めた行列。
沿道は御池通、烏丸通あたりが見やすい。
正午に御所を出発。雨天は翌日に順延。
行列は八つの時代、二十の列。
山国隊の軍楽を先頭に、徳川城使上洛、豊公参朝、
室町洛中風俗、藤原公卿参朝列。
名前を追うだけで、日本史の目次になる。
有料観覧席は御池通に。
京都御苑なら、木立の間から無料で見られる。
歴史の教科書が、目の前を歩いていく。
京都にしかできない祭。
鞍馬の火祭
10月22日、夜。 京都の北、鞍馬の山あいが、火で埋まる。 「サイレヤ、サイレヨウ」の掛け声。 子どもの手松明から、大人がかつぐ大松明まで。 重さ100キロを超える火の柱が、細い…
10月22日、夜。
京都の北、鞍馬の山あいが、火で埋まる。
「サイレヤ、サイレヨウ」の掛け声。
子どもの手松明から、大人がかつぐ大松明まで。
重さ100キロを超える火の柱が、細い街道を練り歩く。
由岐神社の例祭。
はじまりは平安の昔。
都の乱れを鎮めるため、御所から由岐明神を鞍馬に迎えた。
そのとき村人がかがり火を焚いて神様を迎えた道行きを、
千年、絶やさず続けている。
夜が更けると、松明は神社の石段下に集まり、
通りは火の海になる。
会場は狭い。叡山電車の鞍馬駅からすぐだが、
当日は入場規制がかかり、電車も大混雑。
夕方早めに入るか、覚悟して並ぶか。
クライマックスは、注連縄切りと神輿の渡御。
石段を下る神輿を、若者たちが綱で支える。
逆さになって取り付く「チョッペン」の作法は、
鞍馬の男の、一生に一度の晴れ舞台。
山の夜は冷える。上着を一枚。
帰りの電車は、終電まで長い列が続く。
火は、迎えるためのもの。
燃やすのではなく、灯す祭。
平安蚤の市
月に一度、誰かの過去が、広場に集まる。 京都・岡崎公園。平安蚤の市。毎月第二土曜、晴れていれば、古道具の市が立つ。 古い箪笥。欠けた茶碗。たたまれた着物。用途のわからない道具。 ど…
月に一度、誰かの過去が、広場に集まる。
京都・岡崎公園。平安蚤の市。毎月第二土曜、晴れていれば、古道具の市が立つ。
古い箪笥。欠けた茶碗。たたまれた着物。用途のわからない道具。
どれも、かつて誰かの家にあったものだ。それが、また誰かの家へ、移っていく。
出店は、数百。値段は、交渉できる。目利きでなくてもいい。好きかどうか、それだけで選んでいい。
背景には、平安神宮の大鳥居。京都の青空の下、ブルーシートの上に、時間が並ぶ。
来るたびに、品ぞろえが違う。同じ市は、二度とない。
午後になれば、店じまい。広場は、また、もとの広場に戻る。
なにも残らない。だからこそ、また来たくなる。
京都の月例の蚤の市。
東寺弘法市
毎月21日、東寺の境内が市になる。 1,000店以上。骨董、古道具、古着、植木、食べ物、陶器、がらくた。五重塔の下に、それらが並ぶ。 起源は弘法大師・空海の月命日だ。 鎌倉時…
毎月21日、東寺の境内が市になる。
1,000店以上。骨董、古道具、古着、植木、食べ物、陶器、がらくた。五重塔の下に、それらが並ぶ。
起源は弘法大師・空海の月命日だ。
鎌倉時代の1239年以降、毎月21日に御影供(法要)が行われるようになり、
参詣客が増えるにつれて屋台が生まれ、やがて市になった。信仰が、市場をつくった。
外国人のバイヤーも来る。掘り出し物を探すコレクターも来る。近所のおじいさんも来る。値引き交渉もできる。
1月の「初弘法」と12月の「終い弘法」は、1年でもっとも賑わう日だ。
毎月21日に京都にいるなら、朝に東寺へ行く。それだけでいい。
西陣 織物体験
一本の糸が、宇宙のような模様になる。 京都・西陣。高級絹織物「西陣織」の産地である。応仁の乱で、西軍が陣を置いた場所。だから、西陣。 千年以上、ここで、織物がつくられてきた。帯、着…
一本の糸が、宇宙のような模様になる。
京都・西陣。高級絹織物「西陣織」の産地である。応仁の乱で、西軍が陣を置いた場所。だから、西陣。
千年以上、ここで、織物がつくられてきた。帯、着物、能装束。金糸銀糸を織り込んだ、絢爛な布。
西陣織は、分業でつくられる。糸を染める人。図案を起こす人。機を織る人。二十をこえる工程を、それぞれの職人が担う。一枚の帯が、何人もの手を経て、ようやく完成する。
織りは、気の遠くなる作業だ。一本一本、糸を通す。模様が、少しずつ、立ち上がってくる。
体験では、その手織りに触れられる。機に向かい、糸を通す。たった数センチ織るのにも、時間がかかる。
その手間を知ると、一枚の布の重みが、変わって見える。
京都・西陣の織物体験プログラム。
錦市場
京の台所、と呼ばれてきた。 京都・錦市場。全長約三百九十メートルのアーケードに、約百三十の店が並ぶ。 漬物。豆腐。湯葉。鱧。だし巻き卵。麩。京都の料理に必要なものは、たいてい、ここ…
京の台所、と呼ばれてきた。
京都・錦市場。全長約三百九十メートルのアーケードに、約百三十の店が並ぶ。
漬物。豆腐。湯葉。鱧。だし巻き卵。麩。京都の料理に必要なものは、たいてい、ここで揃う。
四百年の歴史を持つ。もとは、魚を商う市だった。地下水が豊かで、鮮魚の保存に向いていたからだという。
今は、観光客も多い。食べ歩きの声が響く。だが、朝はまだ静かだ。料理人たちが、いつものように仕入れに来る。
老舗の主人が、客と言葉を交わす。これは今が旬。これはもう少し待って。
ものを売るだけではない。季節を、教えてくれる。
買う前に、値を聞くといい。それも、市場の作法のひとつ。
京都の食を支えてきた、生きた市場。
船岡温泉の脱衣場に残る古い木の彫り物を、なんとなく眺めてしまうんですよね。登録有形文化財の銭湯が、ふだんの夕暮れにひっそり営業している、そういうぐあいがこの街のふつうなんです。
京都市の市域の七割以上が農地や森林で、北山杉の産地である中川地区では、磨丸太の生産が今も続いている。修学院離宮にその丸太が使われているのを知ると、山と街と宮廷が、思いのほかそっと繋がっているのがわかって、すこしうれしくなります。
652件という数の文化財が、賀茂御祖神社や賀茂別雷神社のように、生きた参詣地として今日も使われているんです。西陣織や京友禅の工房が町家に混じって軒を連ねるエリアを歩くと、観光の文脈とふだんの暮らしの文脈が、どちらが主役かわからない感じで重なっていて、それがいいなあと思う。地下鉄烏丸線で移動しながら、PCを開いてリモートワークをこなして、夕方に円山公園を散歩して、週末に都をどりの舞台を祇園甲部歌舞練場に見に行く、そんな日常が、この街では地に足のついた選択肢になるんです。
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- 西芳寺湘南亭
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- 八坂神社
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- 地主神社
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- 清水寺
- 清水寺
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