温泉
この場所の物語
硫黄のにおいが、ふっと鼻をかすめるんです。標高のある山の懐に抱かれた湯は、強い酸性で、肌にすこしぴりっとくる。この源泉はずっと昔から自然に湧いていたのに、人が浸かれるようになったのは、昭和の終わりごろに長い引湯の工事をやり遂げてからなんですよ。
源泉と温泉地のあいだには、ちょっと気が遠くなるほどの高低差があって、それを技術で乗り越えた人たちがいたんだなあ、と思うと湯の温かさがまたちがって感じられます。湯けむり館でゆっくり浸かってもいいし、せせらぎの湯のように空のしたで風に吹かれながら湯に入る、というぜいたくもある。
ペンションや宿がたくさん並んでいるから、数日泊まって暮らすように過ごすことが、ふだんの旅よりしっくりくる場所なんです。バスに揺られて山をのぼっていく時間そのものが、ここでは旅の一部になる。海の向こうから来た人にとっては、湯の花という白い結晶が川底に沈んでいる風景がふしぎに映るかもしれません。
山と湯がひとつになった、静かで正直な土地です。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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