温泉
この場所の物語
湯の面にゆらゆらと湯気がのぼって、それがすこし甘い匂いをまとっているんです。小野川温泉は「美人湯」と呼ばれていて、その由来は小野小町の伝説にさかのぼるんだなあ。千年以上も前に開かれた湯が、いまもふつうに街の真ん中で湧いている、というのがふしぎでうれしいことなんですよ。
温泉街の中心にある共同浴場「尼湯」に浸かると、地元のひとたちのふだんの時間にそっと混ぜてもらえるような感覚になるんです。米沢の街からほんの少し山を隔てただけなのに、ここには盆地の底に沈んだような静けさがあって、歩くたびに足音が自分に返ってくる。
長く泊まるなら、この静けさこそが暮らしの土台になるんだなあ。多拠点で動いているひとには、街までの距離がちょうどいい「奥座敷」の按配がありがたいはずです。海の向こうから来たひとには、薬師堂にそっと手を合わせてから湯に向かう、あの一連の所作のなかに日本の温泉の原型が見えるんじゃないかと思うんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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