温泉
この場所の物語
川の音が、ずっと低く鳴っているんです。坂州木頭川という名前からして、もう奥へ奥へと分け入った場所にあることが伝わってくる。四季美谷温泉は、徳島の山あいの、ほんとうに深いところに湧いている湯なんですよ。江戸の頃にはすでに「櫁谷温泉」として記され、一八一二年の『燈下録』にもその名が残っている。
ひとが暮らしの延長で、からだを治しに通った湯治場だったんだなあ。単純硫黄泉のやわらかな湯に浸かると、硫黄のにおいがすこしだけ鼻をかすめて、それが山の気配とまざるんです。対岸には新居田の滝があって、歩くたびに水の存在がそばにある。
ただ、二〇二四年の春から休業しているので、いまはその静けさがいっそう深まっている。長く暮らす拠点というより、ふだんの時間を手放しに来る場所という感じがします。訪日の旅人にとっては、徳島の市街から車でたっぷりかかる距離そのものが、この湯の固有性なんだと思うんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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