温泉
この場所の物語
駅を降りると、まっすぐ向こうに山がどんと見えるんです。由布院温泉というのは、その山の麓にひろがる田園のなかに宿がぽつぽつと散らばっている、ちょっとふしぎな温泉地なんですよ。歓楽街をつくらないと決めて、映画祭や音楽祭を町ぐるみでひらいてきた歴史がある。
湯の坪街道をぶらぶら歩いて金鱗湖のほうへ向かうと、雑貨屋や小さな店がつづくのだけれど、にぎやかさの質がどこかやわらかいんだなあ。湯そのものは、源泉の数がとにかく多くて、あちこちで惜しげもなく湧いている。浸かるたびに「ああ、湯って資源なんだ」と素朴に思うんです。
ただ、長く泊まって暮らすように過ごす場所というよりは、散策の楽しさで一日がするする過ぎていく、そういう時間の流れかたをしている。多拠点の拠点にするには、すこしにぎやかすぎるかもしれない。訪日の旅人にとっては、由布院駅から山を仰いで歩きはじめるあの最初の一歩が、日本の温泉地の「入りかた」として、とてもわかりやすいんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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