温泉
この場所の物語
湯船のふちが、すこしずつ盛り上がっているんです。石灰華という析出物が、長い時間をかけて自分で自分の器をつくっていく。入之波と書いて「しおのは」と読むこの温泉は、吉野川の源流ちかく、大迫ダム湖のほとりにぽつんとあるんですよ。
役小角が見つけたという言い伝えがあって、江戸のころには五色湯という湯治場もあったのに、ダムができて元の源泉は水の底に沈んでしまった。それでも湯はふたたび湧いて、山鳩湯という一軒の宿がその濁り湯を守っているんだなあ。浸かると、からだの表面にうっすら成分がのるような、ふしぎな手触りがある。
バスに揺られて降りたあとは、歩くあてもなく静かな水面を眺めるくらいしかやることがない。でも、その「なにもない」が長く泊まるほどちょうどよくなってくるんです。暮らしの拠点にするには遠すぎるけれど、ときどき抜け出してくる場所としてはぴったりで。
はるばる来た旅人には、湯が自ら景色をつくるという、ここだけの時間の重なりを見てほしいなあと思うんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
※上記リンク経由のご予約はAURAの運営を支えます(料金は変わりません)
まわりを読む