温泉
この場所の物語
塩のにおいがする、と思ったら、それは湯のにおいだった。伊勢湾に面した岸壁の突端、木曽三川が海へと解けていくあたりに、桑名の湯はあるんです。ナトリウム-塩化物泉というのは、つまり海に近い土地が育てた湯で、肌にふれるとすこし塩辛くて、ちょっとだけ海水浴のあとの自分を思い出す感じがするんだなあ。
かつて「元気村」という名の複合施設が、この岸壁の景色ごと浸かれる場所をつくっていた。いまは休業中で、湯船に人が集まることはない。だから訪日客にとっては、ここへ来ること自体が、日本の湯の「あいだの時間」に立ち会うような体験になる。
揖斐川河口の風景は、泊まっても歩いても、たっぷりとした水の気配に包まれている。桑名駅から無料送迎バスが出ていた動線が残っているように、この場所には生活拠点として機能しようとした意志のあとがある。湯が戻る日を、土地はゆっくり待っているんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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