温泉
この場所の物語
川のそばで、じっとしている時間がある。下部温泉というのは、そういう場所なんです。承和三年の熊野権現の伝承からはじまって、武田信玄が傷を癒しにきたとも伝わる、ずいぶんと長い付き合いの湯なんですよ。旧い源泉と新しい源泉があって、それぞれ性格がちがうというのが、ちょっとふしぎでたのしいところです。
源泉館では足もとから湯がじかに湧いていて、浸かっていると、自分が地面の一部になったような気持ちになるんだなあ。下部川に沿った静かな盆地のなかを歩くと、湯治場として長く使われてきた町の呼吸みたいなものが、ふだん着のまま残っているのがわかります。
長く泊まって暮らすように過ごすのに向いた土地で、一週間いても飽きないというよりは、一週間いてやっと馴染むという感じです。身延線の駅が目のまえにあるから、拠点にして静かに行ったり来たりするのにもちょうどいい。はるばる日本へやってきた人にとっては、信仰と湯治がひとつの川沿いに重なっている、この土地の時間のぶあつさが、いちばんの手がかりになるんだと思います。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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