温泉
この場所の物語
余野川のせせらぎが、ちいさく耳に届く。大阪の街なかからバスに乗ってしばらくすると、北摂山系の山麓に、するりとたどり着くんです。伏尾温泉は、そういう場所なんだなあ。湧き出るのは天然ラジウム泉で、からだのなかでゆっくり何かがほぐれていくような、ふしぎな静けさがあります。
一軒宿の不死王閣に泊まって浸かると、大阪がすぐそこにあるとは思えなくなる。長く滞在する人にとっては、この「都市からの近さ」と「山の時間の遅さ」が同時に手に入るのが、うれしいところです。生活の拠点として考えるなら、街へ出るのがちっとも面倒じゃないのに、帰れば余野川沿いの空気がある。
訪日客にとっては、派手さのない昭和からつづく湯治の気配こそが、ほんものの手触りになるんじゃないかと思います。歩いて、浸かって、またすこし歩く。そのくりかえしが、ここの時間なんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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