温泉
この場所の物語
ぬるい、とおもうくらいの湯温が、ここではちょうどいいんです。源泉は体温よりずっと低くて、じぶんの熱をゆっくり手放すように浸かる、そういう湯なんですよ。天見温泉は大阪の南の山あいにあって、南海高野線の小さな駅から歩いてたどり着けるふしぎな距離感を持っています。
もともとは高野山へお参りにゆく人たちが体をやすめた湯治場で、南北朝のころにはもうひとが浸かっていたというのだから、この土地の時間はずいぶん長いんだなあ。いちど廃れた湯が昭和のはじめに蘇って、辰野金吾が設計した建物が「南天苑」として残っているんです。
三千坪の庭をぼんやり歩くと、大阪にいることをすこし忘れます。長く泊まるなら、この静けさはふだんの暮らしの延長になりうるし、拠点として考えると都心への電車一本というのがちょっとうれしい。訪日の旅人には、信仰の道の途中にある湯という物語ごと持ち帰ってほしいんですよ。
山あいの空気と、ゆるい湯と、明治の木造建築。それだけで、ここに来た理由になるんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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