温泉
この場所の物語
肌がぴりっとする。それが最初のあいさつなんです。pH がうんと低い強酸性の湯は、からだの表面をすこし叱るように触れてきて、それからじわっとゆるめてくれる。酸ヶ湯温泉というのは、そういうふしぎな順番を持った場所なんですよ。ヒバ千人風呂の広い湯殿に浸かると、木の香りと湯気がまじりあって、時間の輪郭がぼんやりしてくるんです。
湯治部には長く泊まるための部屋がたくさんあって、ふだんの暮らしをそのまま持ち込めるような気安さがあるんだなあ。山のなかの一軒宿だから、歩くといっても湯と食事と雪景色のあいだを行き来するくらいで、それがちょうどいいんです。冬にはとんでもない量の雪が降り積もって、建物ごと白に包まれる。
国民保養温泉地の第一号に選ばれたのも、ここが「治す」ための場所としてずっと信頼されてきたからなんですね。海の向こうから来た人にとっては、火山が育てた湯と豪雪というふたつの自然が重なる場所は、ほかではなかなか出会えないものだと思うんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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